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重圧乗り越え成長 昌平高初プロ野球選手 吉野創士

 昌平高の吉野創士外野手がプロ野球の楽天にドラフト1位で指名され、入団が内定した。1年生の頃から類いまれな打撃技術で高校通算56本塁打を記録。同校第1号のプロ野球選手となる右の主砲は、「記憶に残る選手になりたい」と活躍を誓う。

座右の銘である「勇猛精神」と書いた色紙を手に飛躍を誓う昌平高の吉野創士=16日午後、宮代町

 

「楽天で愛される選手に」

 

 「一時期はプロを目指すのをやめようと思った」。185㌢、77㌔と、モデルのようなすらりとした体形に、愛嬌(あいきょう)ある性格が魅力の好青年だ。そんなスター性を備えた吉野は、早くから「プロ注目」として脚光を浴びた。だが、周囲の期待や重圧に押しつぶされそうになっていたという。黒坂監督は「ベンチ裏で泣いている姿を何回も見た」と振り返る。

 「スイングは7~8割、振り抜きが10割の力で、ボールをぶつけるのではなく、すくって上げる感覚。そうすると、スピンがかかり、体重がなくても打球が飛ぶ」と吉野。しなやかな打撃フォームでアーチを描くにつれ、各球団のスカウトや高校野球ファンの注目が高まり、チームの勝利だけではなく個人の結果も求められる存在なった。それが次第にプレッシャーへと変化。「高校2年生の秋から最後の大会までが一番つらかった」と、責任感が強い男は一人で抱え込んでしまった。

 すると、「期待に応えようとして高校球児らしくではなく、人を魅了させようとしてしまった」と、自分勝手なプレーにに終始。「仲間の存在を忘れていた」と、チームの雰囲気を乱した。

 そんな頃、当時の主将岸望樹が中心になって開いたミーティングが、吉野の目を覚まさせた。仲間から「勘違いするなよ」と指摘されるなど、本音をぶつけ合ったことで、見ていた方向性の誤りを自覚。「みんな言いづらかったと思うけれど、このままじゃいけないと教えてくれた」と感謝する。

 それ以来、練習から泥くさく取り組み、チームプレーに徹した。今夏の全国高校野球選手権埼玉大会では、人生初のヘッドスライディングをするなど、高校球児らしくひた向きにプレー。初の甲子園には一歩届かなかったが、一体感がよみがえった昌平高は準優勝を果たした。原動力となったのは、吉野であることは間違いない。

 ドラフト会議で楽天から1位指名されると、高校での2年半の思いが込み上げ、涙を流した吉野。周囲には自分自身のことのように祝福する仲間たちの姿があった。

 目標は「ファンから愛される選手」だ。6日のクライマックスシリーズ楽天―ロッテの試合を球場で観戦した時には、早くもサインを求める楽天ファンの行列ができたという。「楽天といったら『吉野創士』と思われたい」。高校野球を通じて人間的にも成長した大砲は、プロの世界でもファンの心をわしづかみにしてくれるはずだ。

 

 吉野 創士(よしの・そうし) 外野手。昌平高1年生の春からレギュラーの座を獲得すると、2年生秋には同高(東和大昌平高時代を含む)初の県大会優勝、3年生夏の全国高校野球選手権埼玉大会で準優勝に貢献。高校通算公式戦42試合出場、打率3割4分1厘、56本塁打。今秋のプロ野球ドラフト会議で、楽天から1位指名を受けた。右投げ右打ち。185㌢、77㌔。18歳、千葉県出身。

 

=埼玉新聞2021年11月30日付け7面掲載=

 

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