2026年11月4日配信
下がらない学校、上がる学校
それぞれの傾向に注意

前編では、第1回進路希望状況調査の結果をもとに、出願までの倍率の動きを探りました。過去2年のデータでは、全体倍率も普通科倍率も第1回調査がピークで、第2回調査、実際の出願へと徐々に下がっていました。今年もまた、似た推移をたどると見られます。
特に第1回で高倍率だった学校ほど、出願時には大きく落ち着く傾向がありました。このことは、受験生が志望校を考える上で大切な手がかりになります。
◆倍率だけでなく募集人員にも注意
受験生の皆さんはどうしても倍率にだけ目が向きがちですが、その学校や学科の募集人員にも注意を向けましょう。
例えば、普通科で360人募集の学校を考えてみます。この学校を希望する人が396人いたとすると倍率は1.1倍です。もし次の調査で、この学校の希望者が18人増えたとすると倍率は1.15倍になります。一方、専門学科で40人募集の学科があり、希望者が44人いると倍率は1.1倍です。では、この学科では希望者が何人増えると倍率が1.15倍になるでしょう。答えは2人です。極端な例を出しましたが、募集人員が少ない学校や学科ほど、わずかな人数の増減で倍率が大きく動くということを頭の片隅に入れておきましょう。
◆希望者数が増減しにくい学校
今後、本番に向かって倍率が低下していくだろうという話は前編でしましたが、ここでは倍率でなく、希望者数に焦点を当てて、今後の変動を予想します。
普通科に比べ、専門高校や専門学科では、希望者数が比較的変動しにくい場合があります。特に、その学校や学科でなければ学べない専門分野がある場合、志望変更の選択肢が限られるためです。例えば今回調査で越谷総合技術や新座総合技術の食物調理科が人気となっていますが卒業と同時に調理師免許が取得できる学科は、公私合わせても数が限られているので、志望が強い生徒ほど他校や他学科には移りにくい状況です。
◆都市部の学校は変動しやすい
普通科の場合、学ぶ内容は共通なので、希望者数や倍率を見ながら、実際の出願を検討することができます。
その際ポイントになるのは、同じ地域に(近隣に)、学校数がどれだけあるかです。さいたま市・川口市・川越市・所沢市・越谷市が埼玉県における五大都市(人口の面で)ですが、地域内に多くの学校があるので、希望者数や倍率を見ながらの変更が比較的容易です。一方、人口が少なく学校数も少ない地域の場合、単に人口問題だけでなく交通インフラの状況も合わせて考えると、希望数者や倍率を見ながらの変更が、都市部ほど簡単ではありません。
従って、学校間の志望変更による希望者の移動は、都市部に比べて少ないと考えられます。ただし、募集人員の少ない学校や学科では、わずかな人数の増減でも倍率が大きく動く場合があることには注意が必要です。
また、単に学校数が多ければ良いというものではありません。学力的に近く、教育内容や通学条件などの面でも比較対象となる学校が複数存在することが、志望変更のしやすさにつながります。
◆低倍率というだけで判断しない
現段階で希望者数が募集人員に達していない学校、いわゆる定員割れの学校が数多くあります。
一般に低倍率イコール不人気校と考えられがちです。しかし、希望者数や倍率は、地域の人口や交通の便などにも左右されます。受験生が多く集まる地域にある学校と、人口減少が進む地域にある学校とでは、そもそも募集環境が異なります。従って、倍率が低いからといって、その学校の教育内容が劣っているわけでも、生徒たちが充実した学校生活を送っていないわけでもありません。
第1回調査で高倍率だった普通科の学校を見ると、さいたま市、川口市、川越市、所沢市、越谷市など、人口の多い都市部に立地する学校が目立ちます。もちろん、上尾高校や杉戸高校のような例もありますが、全体としては人口が集積し、交通の便が良い地域の学校に希望者が集まりやすい傾向がうかがえます。
倍率は、志望校を考える上で重要な情報です。しかし、それはあくまでも、ある時点における希望者数と募集人員の関係を示した数字にすぎません。その後の倍率がどう動くかは、学校・学科の特色や地域の状況によっても異なります。
そして何より、倍率が高い学校が自分に合う学校とは限りませんし、倍率が低い学校が自分に合わない学校とも限りません。
数字は参考にする。しかし、数字に振り回されない。
最後は、自分がその学校で何を学び、どのような3年間を送りたいのかという原点に立ち返って、志望校を考えてもらいたいと思います。
教育ジャーナリスト 梅野弘之
=「埼玉新聞社 高校受験ナビ」オリジナル記事=
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