板金で折り鶴制作　久喜工業高校教諭　平和資料館に寄贈

　久喜市野久喜の県立久喜工業高校に勤務する黒沢孝祥教諭（４８）が持ち前の板金の技術で製作したステンレス製の折り鶴を東松山市の平和資料館に寄贈した。
　黒澤さんは同校機械科で生徒に板金など金属加工を指導している。被爆地の職人が終戦の日に、折り鶴を作っていたことを知った。職人の思いに加え、生徒に「手作り、手仕上げの良さを伝えたい」と自身も折り鶴の製作に取り組み始めた。

寄贈したステンレス製折り鶴への思いを語る黒沢さん

　金属を木槌（づち）ややっとこで折り曲げる繊細な作業。銅やアルミニウムなどさまざまな金属を試し、表面の柄を付ける技法にもこだわった。
　平和の象徴、折り鶴。ロシアによるウクライナ侵攻が続き、世界情勢が不安定ななか、平和への思いを込め、作品製作に取り組んだ。
　今回の作品はステンレス製。大きさは幅１３５㍉奥行き１４０㍉高さ９５㍉。硬い素材でより高い技術が必要とされる。「日本らしさを表現しよう」。エッジング加工で表面に和柄の模様を装飾した。
　実用的な板金の技術だが「ものづくりだけでなく、作ったものにメッセージを込めたい」と芸術性にこだわった。初めて今年の県展に出品。工芸部門で見事入選した。
　完成した折り鶴をケースに収め、東松山市の県平和資料館に寄贈。黒澤さんは「資料館に快諾していただきうれしい。作品を見た来館者の記憶に残り、平和への思いをはせるきっかけになれば」と話している。

＝埼玉新聞２０２３年１０月７日付け１０面掲載＝